9月の講演のお知らせ

カフェスローOSAKAで開催しているお話会、しばらく定例化することにしました。 9,10,11月のスローなお話会は第三火曜日に実施することにしました。 時間を少し繰り下げて、19時半から開催しますので、ご友人にもお知らせください。 9月(15日)は「使い捨て文化を考える」で、10月はフェアトレード、11月は総集編として「スローな人々」辺りになるかなあと思っています。 次は、その他のイベントで坂田がお話しする予定のご紹介です。 1.気候ネットワークの勉強会 温暖化と地域活性化について話します。 25日、午後6時半から、京都の気候ネットワーク事務局にて。 (ご参加の方は、坂田までご連絡ください) 2.大阪市のエコカフェ講座 昨年に引き続き、大阪市の5カ所で開催する、おばちゃんに伝える温暖化講座です。 11,14,15です。 以下のリンクを見て、ご参加ください。 http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000048432.html 3.いきいき地球館の「食と健康と環境の講座」(シニア自然大学) これも昨年に引き続きの出演です。 今回は「スロービジネス」についてお話しします。 http://www.chikyukan.com/event/syokuaut5.html

グレートバリアリーフがなくなり、380億ドルの損失

Reef harm ‘would put $38b hole in tourism’.によると、温暖化の影響で、今後百年間で、グレートバリアリーフがなくなってしまうという。 経済的損失は、観光だけで380億ドルにのぼる。 おそらくこの金額は、百年間の数字だろうから、年間でいうと、3.8億ドル=約3兆円の損失だ。 グレートバリアリーフのある沿岸の経済がこれだけダメージを受けるのだから、相当なものだ。 ちなみにサンゴは、「acidification」というプロセスでダメージを受ける。 海水温の上昇とそれに伴う、海水の酸性化(acidification)ということだ。 こういう観光への影響は経済モデルの想定に入っているだろうか? 各地域の資源・産業をていねいに見て、影響を受ける産業を拾い上げていく作業が必要になるので、経済モデルに組み込むことはほとんど無理だ。 おそらく多くの経済モデルは、この手の影響は想定外のはずなので、温暖化の「副作用」としての産業の影響は予想以上に大きくなる可能性がある。 ついでにいうと、オーストラリア、「the Minister for Climate Change, Penny Wong」という人がいるらしい。 温暖化対策大臣ということか。 オーストラリアは温暖化というか、京都議定書から離脱したので、かなり後ろ向きなのかと思ったけど、そうでもないのかな。

新刊:スローなカフェのつくりかた、出ました!

ゆっくり堂という出版社は、自分たちが売りたい本を作ろうということで、ナマケモノクラブの中村隆市さんと辻信一さんが中心になって設立した会社だ。 僕も縁あって、いろいろと協力させていただいている。 今回は、カフェスローの吉岡淳さんが監修した「スローなカフェのつくりかた」の企画に関わらせていただいた。 ゆっくり堂の運営も幽霊状態だったのだが、今回はようやく多少なりとも貢献できた気がする。 この本、まだアマゾンには出ていないみたいだけれど、以前あった、「カフェスローへようこそ」という本が在庫がなくなってきて、改めて印刷するよりは、中身も変えて、新しく作ろうということになって生まれた。 せっかく書いた本が、絶版になるのは残念だけど、ここに、新しい命を与えられて、生まれ変わったと思えばいいのかもしれない。 僕たちスローカフェムーブメントに関わる人間たちが感じ、思っていることが十分に紹介された一冊になったと思う。 書店で見かけることは少ないかもしれないので、ぜひスローカフェに足を運んで、本を手に取ってみてほしい。 関西だと、カフェスロー大阪、ミドリカフェがしっかりと紹介されているほか、LOTUSROOTS、ほっこりカフェ朴、日月クラブ、Cafe びすたーれいが、1ページ使って紹介されている。 ちなみに僕も文章書いてますよ。 僕だけちょっと堅いかも(涙)

サマースクール

火曜日から金曜日まで、近畿大学の文系でサマースクールが開催されています。 今年は経済学部が中心となる年で、しかも担当する委員会の委員長が僕でした。 なんだか不思議な巡り合わせというか・・・当たり年というか・・・ですね。 高校生の参加者は150名ぐらいで、なんだかいい雰囲気です。 僕が高校生の頃は、サマースクールどころかオープンキャンパスも(たぶん)なかったし、そもそも学部のカラーのパンフレットすらなかったんじゃないかなあ。 赤本の紹介を見て、白黒の願書を取り寄せてって感じだった気がします。 田舎にいたからかもしれないけどね。 なんだか隔世の感。

学生のうれしい一言

授業をやっていてよかったなと思う瞬間があります。 こういう瞬間を与えてくれる学生は、これから伸びるんじゃないかなあ。 1.「自分で考えること、とても難しかったけど、勉強してるって気がした」 授業の感想をレポートに添えるよう依頼したときに、書いてくれた言葉。 僕の授業では、自分で図を書いたり、答えを書く時間があります。 その時間、僕が答えを出すのをじっと待っている学生は、おそらく伸びない。 そこで間違いながらもやる学生は伸びる可能性がある。 そして、その時間こそが「勉強だ」と実感できる学生は、もう勉強のおもしろさに目覚めかけている。 教員というのは、学生のやる気を起こすまでが第一の仕事だ。その後は、学生に勉強の題材を提供するぐらいで十分。 なので、学生が、何が勉強なのか、分かってくれることはとてもうれしい 2.レポートの発表に前向きに取り組んでくれる 最後の授業の日に、立候補を募ってレポートを発表してもらっている。 中には、(点数のために)発表に手を挙げ、ぼそぼそとレポートを読むだけの学生もいる。 でも、多くの学生は、せっかく発表するのだからと、入念な準備をしてくる。 200人ぐらいいる学生の前で発表するというプレッシャーに立ち向かいながら、工夫してきたことを表現しようとするということは、とても大変なことだ。 そういう学生が、毎年かなり出てくるのはほんとうにうれしい。 3.レポートを実践の機会にしてくれる 今年の学生で1名、タバコの問題を取り扱った学生がいた。 その学生は、発表に備えて、大学の周りのタバコのポイ捨てを拾ってまわったそうだ。 こういう実行力はとてもうれしくて、感動してしまった。 4.予想以上にレポートをがんばってくれる 先のエントリーでは、「的外れな努力」ということを書いたけれど、やっぱり最低限の要件だけを満たせばいいという学生と、それ以上をやろうという学生は、レポートの中身が違う。 残念ながら、的外れで点数を上げられない学生にも、何人かそういう学生がいた。 せっかくのレポートだから、がんばってみようという気持ちは、とてもうれしい。

温暖化を劇的に進行させる気候の仕組み

なんとも恐ろしい本を読んでしまった。 『「エコ罪びと」の告白』という本で有名なフレッド・ピアスがまとめた『地球最後の世代』(NHK出版、2009年)を読んで最初に感じたことだ。 温暖化に関しては、いろんな議論があるが、少なくとも地球の気候システムには、温暖化を爆発的に進行させる(場合によっては緩和する)エンジンのような仕組みがあるらしい。 それは、海洋の大循環、モンスーンやエルニーニョといった熱帯地域から熱が運ばれる仕組み、そして成層圏における熱交換である。 これらは温暖化がある程度進行すると、一気にその姿を現すが、さらにその前段階で温暖化を加速させる仕組みもある。 それは、シベリアの泥炭層が暖まることによって発生する膨大なメタン、アマゾンが乾燥することで起こる木々からの二酸化炭素放出、そして、海底に沈むメタンハイドレードの大規模な崩壊だ。 こういう本を読むと、地球の行く先にはもう未来がないのかな?と思ってしまうが、一番感じたのは、関係する科学者で「諦めている人はいないように見える」という事実だ。 厳しい現実を知りながらも、何とかしようと努力している人たちがいる。 その、精神力をこの本を読みながら、感じてもらいたい。 本書は、温暖化に関する科学的知見のうち、温暖化を進行させる側の情報を集めた本だ。 (とはいえ、僕には温暖化懐疑説でまともなものはあまり見たことがない。 せいぜいが、研究の不備を突いて、「その主張には意味がない」と否定をする主張ぐらいだ。 まあ、それでも自分で論文を読んで、その不備を突くのは大切なことだ。それに対して、自分で原著にあたって分析を追わずに批判する人のなんと多いことか・・・) それはさておき、この本は、ルポのような体裁をとっているために、ものすごく読みやすくなっている。 数字がたくさんあるが、それはちょっとおいて、理屈の流れを追うようにすれば、思ったよりも簡単だと思う。 どうせ数字は、「今まで考えているよりも影響が大きい」という程度にとっておいた方がいい。 こういうものは、分析が進むにつれて影響が変化するもので、大切なのは、どういうメカニズムがそこにはたらくのか、ということだ。 ちなみに、この本は訳もすごくいい。 すらすらと引っかかるところがなくて、すんなりと頭に入ってくる。 温暖化のことを知りたいと思う人には、お薦めの一冊だ。 これを読んだ次に読む一冊は、温暖化対策の技術的可能性について書かれているものがいいかもしれない。 なにかいいものがないかなあ・・・

レポートの採点が終了しました

大学の講義、環境経済学のレポート採点が終了しました。 あとは、テストを実施して、その採点ですね。 さて、先日「出来の悪い人」をご紹介しましたが、今回は、学生がレポートに添えてくれたコメントを紹介しておきます。 1.教室が静かなのはいいが、うるさい人を黙らせる時間が無駄。無視して進めるべき。 なるほど。そういう考えもありなんですね。 たぶん、うるさい人を無視して授業進めると、今みたいな静けさは得られないと思うけどな。 2.授業のレベルが低すぎる。 これは耳が痛い批判。普段僕の耳に入るのは、「難しすぎる」という意見ばかりなので、こういうのはむしろうれしい。 わかりやすく、でもしっかり考えなければならない。 そんな授業を目指します。 3.黒板の文字が読めない たとえば、X1とかのときに、小さい1が読めないというコメントです。 このコメントをもらって、はたと気づいたのは、添え字を小さくしたいというのは、僕が読んだ本や論文は普通そうだからであって、別にそれ以上の理由はないんですね。 わかりやすくするために、これは改善します。 4.後でノートを読み返しても分からない 話すスピードが速いというのもあるのでしょうが、講義では、「板書だけ写しても絶対に分からない」と言っています。 ノートが分からないことの大半は学生の責任です。 何をメモしたら後で分かるのか、いっしょうけんめい考えてください。 講義が速すぎて追いつかなければ、その場か、後で質問してください。 5.大阪・関西の事例が欲しい これはもっともですね。 後期の講義からは参考にさせていただきます。 6.講義の後半が駆け足に見えるけど? 確かにそうかも知れません。 前半に大事なことを集中しているということもあるのですが、特に終わりの方は、知って欲しいことを羅列しがちですね。 理解できないだろうと思いながら話しても、僕のアリバイというか自己満足にしかなりません。 次回からは、時間配分と、話す量、気をつけます。 7.自分で考える時間がうれしい 講義中、供給関数のシフトや外部性の事例づくりなど、簡単な問題を出して、考えてもらうことがけっこうあります。 「さっさと答えをくれ」というコメントがあるかと思えば、意外と評判いいみたいです。 考えている間、教室を歩き回って質問受け付けてくれるといいなという要望もありました。 確かにその方が、親切ですよね。後期からは対応します。

7月のお話会は16日、エネルギーがテーマです

そうそう、今週の日曜日は、

カフェスローOSAKAでイベントがあります。 京都の京町家で豆屋を営む楽天堂さんが、いらっしゃって豆のお話をしてくださいます。 おすすめですよ。 (http://slowspace.blog.shinobi.jp/Entry/286/) さて、本題。 スローなお話会は、普段ちょっと気になっている環境問題から話題を一つ選んで、ていねいにお話しする会です。 みなさんにゆったりとした時間を過ごしていただくことが一番の目的です。 毎回独立した話題を取り上げて、できるだけわかりやすくご説明しますので、お話会に初めて参加される方や予備知識のない方でも大丈夫です。 参加者は、発言を求められることはありません。 お一人様の参加も大歓迎です。 2月から月に一回のペースで開催しているお話会も、六回目になりました。 今回は、身近なのになぜか難しい気がする「エネルギー」について、考えていきます。 太陽光発電ってなんかよさそうだけど・・・。 原子力は環境にいって聞くけど、怖いという人もいる。どっちなんだろう。 石油がなくなるってこどもの頃に聞いたけど、なぜなくならないの? などなど、気になっている問題、いろいろとあるはずです。 ああ、エネルギーってこういうものなのか、難しくないんだって思ってもらえるように、基本的なことから解説していきます。 家に帰って、電気料金の請求書をすみずみまで読めるようになったらいいですね。 そうそう、第6回は「ちょっと遅めのキャンドルナイト」です。 ろうそくの灯りを楽しみながら、お話会の時間をお過ごしください。 日時:7月16日19時過ぎから(18時半受け付け開始)~21時頃まで 講師:坂田裕輔 場所:カフェスローOSAKA 連絡先:こちらからお願いします。 料金:1000円(前日までに予約の方は800円。条件付きで学割あり) +ワンドリンク(オーガニック&ナチュラル) 食事:850円。(数が限られているので予約が確実です) (畑のハンバーグプレート、大地の恵みプレート、いろどりカレー(または豆乳シチュー)プレートからお選び下さい) カフェスローOSAKAについて:http://slowspace.blog.shinobi.jp/ (大阪市淀川区十三元今里2ー5ー17) 学割制度について:http://www.ecofirm.com/n/archives/509 (条件:禁煙+マイボトル宣言にサインしてくれた人) 主催:むつき工房 (http://www.slowlist.org/slowtalk/concept/) Mixiにお話会コミュあります (http://mixi.jp/view_community.pl?id=3295720

できの悪いひとたち

講義で学生にレポートを課した。 1割ぐらいの学生が、レポートの要件に満たないレポートを提出してくる。 今回は、「企業が公害を出した事例を一つ選び、その解決方法を経済学的手法にあてはめて検討し、当否を考えよ」という感じのもの。(詳しくは、こちらをどうぞ) たったこれだけのレポートなのに、なぜか環境問題の事例を5個ぐらい列挙してくる学生や、環境問題(たとえば水俣病)について、発生原因・対策・その後の裁判の経過などを延々と書いてくる学生がいる。 文章で要求事項が書いてあって、それを一つずつつぶしていけば、それなりのものができるように、わざわざ書いているのに、そのとおりにできない。 なぜか、自分勝手に「環境問題について事例をあげて自由にかけ」とでも要求されたかのようなレポートを書いてくる。 人によっては、もう「環境問題についての感想を書け」とでも言うかのように、延々と企業に対する恨み言を書く人もいる。 これが実体験に基づいているなら、点をあげてもいいかなと思わないでもないけど、そうでもないから始末におえない。 要求が高いわけじゃあないと思う。 本文の出来はさておき、大部分の学生は、要件をきっちりと満たしてきて、6割ぐらいの点数はちゃんととっている。 それが、なぜできないんだろうとついぐちりたくなる。 レポートを書いたことがあまりない学生に向けて、「この順番で書けばレポートが書けるようになるよ」と伝えたくて、いろいろ条件を課しているのに、それが伝わっていないのかも知れない。 以前、「先生のレポートは細かい条件が多すぎて嫌だ。自由に書かせて欲しい」という要望をレポートに沿えてきた学生がいた。 その学生のできは、ぼろぼろだった。 追記:誤解のないように書いておくが、ここで言っている「できの悪い」というのは、「アタマのできがわるい」とかそういう意味ではなくて、あくまでも「レポートのできが悪い人」です。

読書メモ:『追跡!私の「ごみ」』

エリザベス・ロイト(訳:酒井泰介)『追跡!私の「ごみ」』NHK出版、2009年 (Elizabeth Royte “Garbage Land: On the Secret Trail of Trash”) 家庭から出るごみの行方をていねいに追いかけたドキュメンタリー。 下水まで含まれているのが、日本ではあまり例がない。そもそも、日本で下水の話を研究者が調査・研究しているのか少々疑問に思う。 本書は、ごみ処理の世界の暗部にも少しだけふれ、リサイクルの非経済性も紹介しながら、「リサイクルなんてやめてしまえ!」という結論にはなっていない。 著者は、この調査と平行して、自宅のごみを細分別して重量を量るという試みや、コンポストを作ったりしている。 こういった一連の活動の中で、以前なら見向きもしなかった海岸清掃にも参加した。 「環境的市民性」という観点を使って、一見むだかもしれない日々の取り組みの意義を説明する。 同時に、五年や一〇年ではなく、もっと長期の視点を持つべきだと指摘する。 現状を批判することが「知っている」ことの証と勘違いしてしまって、辛口でさめたコメントがもてはやされるが、そういう不十分な現実を知って、なお前に進もうとする意思こそがだいじだと、本書を読んでいて、気づかされる。 なにより、ごみ処理の問題は、はじまったばかりだ。 様々な技術や政策が実験され、何が生き残るか試さなければ、これからの方向性を決めることなんてできない。 「完璧なものが出来上がってから、実際に導入すればいい」というと賢そうだが、まともな工学者なら、実験室での実験が現場でいかに役に立たないか、現場での経験がどれだけ貴重な「実験」か、よく分かっていると思う。 以下、おもしろかった記述の一部を紹介しておく。 p.24 アリゾナ大学のごみプロジェクトが提唱したパーキンソンのごみの法則 ごみは、その収容容器や場所がいっぱいになるまで増えるものだ p.55 サウスカロライナ州で最も貧しいリー郡では、年間予算の五分の一を、ごみ処理会社アライド・ウェイスト社から受け取っている。ミシガン州のサンプター郡区は、カナダのトロントのごみを引き受けて、歳入の半分を得ている。 p.104 焼却の安全性について おそらく、そういった数字データはもはや問題ではなさそうだ。この十年間、地域の反対や連邦および州の規制強化の結果、ごみ焼却発電施設の維持および新設は、非常に高くつくようになっている。一日にわずか千トンのごみを処理する施設を建設するのにさえ一億二千万ドルもの費用がかかるのである。実際、アメリカ国内では九六年以来、ごみ焼却発電所は新設されていない。