牛乳パックとヨシで紙すき

4月から肩書きが変わります。 毎年、肩書きが変わって、付き合う方は大変ですね。 去年は助教授→准教授でしたが、今回は准教授→教授です。 来年はまた、教授→准教授だったりするのでしょうか。 こういうケースは、若くして教授になって、別の大学に移ると、そこの規定では准教授としてしか認められないってケースでよくあるみたい。 念のためにいっておくと、僕はしばらく移るつもりはありません。 昇進させてもらったお礼奉公というのがやはりあるんだろうと思っています。 (でも、おもろそうな話をいただけば、ぴょんと飛びつく可能性はありますね。特に大学以外の話だと) ちょうど、自分の名刺が切れていたこともありますので、なにか話のネタになりそうなものを探していたところ、いいものを見つけました。 大和川のヨシと牛乳・酒パックを使って、紙を手漉きしている工房です。 以下、調査レポートです。 以前(といっても、1999年)、再生紙とびわ湖のヨシを使った名刺を作りました。 印刷の具合もよく、コシもあって、なかなかいい名刺でした。 当時鹿児島に住んでいたので、鹿児島でびわ湖のヨシというのもちょっと遠いかなと思って、いつのまにか使うのをやめてしまいました。 関西に戻ってきて、4年が経ち、そろそろ地元とのつながりもできてきたので、名刺もぼちぼちびわ湖のヨシなど使ってみてもいいかなとおもっていたところ、友人が大和川のヨシがあるよと教えてくれました。 それが紙再生工房という平野区にある工房です。 ここでは、12名の知的障害者と3名のスタッフが仕事をしており、福祉作業所にしてはめずらしいと思うのですが、紙だけを生産しています。 紙漉きというのは、簡単にいうと、細かく砕いた紙の原料を水にとかしたものを網ですくって乾燥させるという作業です。 なんとなく、紙漉きキットのようなものがあって、それでやっているのかなと思っていたところ、結構本格的な設備が整っていました。 大きなものは、大型のごみバケツに船のモーターをつけた「ミキサー」とできた紙を圧縮して厚みを均等にするローラーです。 紙漉の場所は、調理室などにある深めのシンクです。 以下、紙漉の行程。 1.紙箱工場(紙工会社)からもらってきた牛乳パック・酒パックなどの表面のビニール・アルミを手ではがし、こまかくちぎる 2.ちぎった紙を水と混ぜてミキサーで砕く 3.砕いた紙をざるでこして、取り出しておく(ここではプラスチックの衣装ケースにいれてました) 4.こしたものに色づけ(色画用紙などを使う)したり、ヨシを入れる場合はここで混ぜる 5.シンクに水を張り、規定量の原料(タネ)をいれて、紙を漉く 6.掃除機のようなもので水を吸い取る 7.板に載せて、乾燥 8.1日ぐらいで乾燥するので、ローラーをかけない場合はこれで完成 9.ローラーをかける場合は、かける(ローラーをかけると、表面が平らになり、普通の紙になる。手漉きの風合いがすきな場合は、8で止めておく方がいい) 書いてみたら、かなりの工程ですね。 ヨシは、自転車のパーツや釣り具で有名な堺市の企業、シマノさんが取り組んでいる活動の一環として提供されています。 なんでも、刈り取ったヨシからリグニンを溶かし出すためか、アルカリ処理します。ここまでシマノさんがやってくれて、それを原料として供給してくれるそうです。 来年度は、この大和川再生事業にもぜひ参加して、自分の刈ったヨシで紙を作りたいものです。 こうしてできた紙だけでもいい感じなのですが、ここの特徴は、この紙を印刷素材として利用することを考えていることです。 オリジナルデザインのものもいい感じのものが多いですし、僕のように自分の名刺のデザインを持ち込んでもよいようです。 紙を加工したり、印刷したりして最終製品として供給するというのは、1次産品を販売するのではなく加工食品を販売することで付加価値を高めようという活動と通じるものがあります。 おそらく、そのときに活きてくるのが「紙再生工房」という魅力的な名前です。 福祉作業所の仕事が、ちゃんとビジネスとして成り立つように一連の仕組みをデザインしているところに、施設長の前橋さんのセンスが感じられます。 ちなみにこの工房ですが、家内工場というのかな、3階建ての住居の一階がガレージのような倉庫のような感じになっている建物を使っています。 この建物、70年代ぐらいに建てられていそうですが、普通に住めそうな家ですし、周りも同じ頃建てられたと見える家が、びっしりと家が建っています。 地域コミュニティがちゃんとできあがっている住宅街の一角という感じです。 町中にこういう工房があるというのは、地域の人にとっても、昼間働いている人が近くにいて、地域を見守っているという意味で安心感をもたらします。 もっともっと、町中の工房、見直されていいんじゃないかなという気がしました。 当日、写真を撮ったのですが、同行の学生たちと撮った集合写真のようなものなので、掲載は控えておきます。 次からはちゃんと掲載用の写真を撮ります。 名刺ができたら・・・出会った方に配りますので、受け取ってくださいね。