主義は人に壁をつくるから、ismをwasmにしてしまおう

環境活動の巨人というのは、まだまだ現役な人が多い。 昨日は、その中でも際立った一人だと思われる人、サティシュ・クマールに会う機会を持つことができた。 サティシュ・クマールは、環境系の雑誌のリサージェンスの編集長を務めている人物だ。 彼は、運動や精神性という観点からではなく、どちらかというと知的な実践を通して環境への取り組みを広げようとしている。 本を読めば、彼がインドからイギリスまでお金を持たずに歩いて旅した話がでてくるし、いろいろな場所を訪れた話が分かる。また、元ジャイナ教の僧侶であったこともあり、精神的にも非常に豊かなものを持っている。 でも、彼の本質は、冷徹に現状を見つめ、行動を積み重ねていく科学者なのだと改めて感じた。 昨日の彼の言葉がとても印象に残った。 「なんとかism(なんとか主義)というのは、自分に枠を作ることになるから、人と人を隔てる壁になる。だから、ismっていうのはwasmにしてしまおう。(isの過去形がwas)これからは、Natural Way(自然に沿って自然に生きる)で行こうよ」 深く納得させられる言葉。 それとともに、こんなに重要な話をだじゃれにしてしまうとは。。。 「すごく偉い人」と少し身構えていたのだが、会合では笑いが絶えなくて、辻信一さんが「サティシュおじさん」っていう理由が分かる気がする。 マクロビオティックにこういう話がある。 「今、あなたの体調が悪いのはあなたが生まれてきてからの積み重ねが現れているのです。だから、体をなおすためには、それと同じだけの時間が必要なのです」 一気になおす方法はないってことなのだが、こういうのも、健康イズムにかかってしまうと、効果の早いものを求めてしまう。 (で、その結果、短期間で病院やさまざまな自然療法を渡り歩くことに) 自然に少しずつコース変更できればそれでいい。 要は気持ちを持ち続けること、機会があるごとに少しずつ実践してみることだ。 そして、自分の気持ちをちゃんと表明し、似たような考えを持つ人と行動することも大事だ。 そうじゃないと、いつまでも自分の行動や努力は広がらなくて、がんばり続けなければならなくなる。 サティシュさんの著書は「君あり、故に我あり―依存の宣言」というタイトルで翻訳されている。 この本は、サティシュさんが世界を回っていろいろな人に会った記録だ。会見の模様についての記録と彼の受けた印象などについて書かれている。 マーチン・ルーサー・キング、バートランド・ラッセル、E.F. シューマッハー、ヴァンダナ・シヴァといった人物以外に、ガンジー主義の重要人物などとの対話が収録されている。 「なぜ環境問題を考えることが重要なのか」を考えさせてくれる一冊だ。 坂田ゼミの学生には必読だ。 結びの言葉を紹介しておこう。 私たちは自らの存在と経験、幸福と健康、栄養と食物を地球に依存している。私たちは、愛するものからの愛と、美しいものの美と、善良なものの美に依存しているのだ。傷つきやすさと謙虚さを奉じて、地球とお互いに対する私たちの完全なる依存を宣言しよう。「君あり。故に我あり」と。 (p.336、第十六章 依存の宣言)