今週の環境コラム

2月5日から11日までの環境ニュースを元にしています。 しばらく空いてしまいました。書くのに時間がかかる割には、なかなかおもしろいのが書けないので、やめてしまおうかと思ったりもしましたが、タイトルを「コラム」にして、取りあげる記事も少なめにして続けてみることにします。 元々の考えから比べると、ちょっとトーンダウンのような気もしますが、読んでおもしろい方が良いと思いますので、文章の練習を兼ねて、「読み物」に取り組んでみます。 発効頻度は、おもしろいネタがないときもあるので、「今週」といいながら、月に2本作成することを目的にします。 環境問題は、科学か政治か 今週紹介する環境ニュースは二本です。両方とも、環境問題の解決に向けて取り組んでいくこと自体には同じ方向を向いているのだけれども、具体的な戦略になるとばらばらという点で共通している気がします。 ニュース1: 一本目は、Wiredからで、 Wired News - バイオディーゼル普及に向け、草の根派と大豆業界が不協和音 - : Hotwired です。 バイオディーゼルに関するアメリカの取組は二極に分かれています。一般家庭の裏庭でいろいろな原料を使って作るケースと、大豆などを利用して同一原料から大量に製造する方法です。前者を仮にエコロジスト、後者を大豆系の業界と呼んでおきましょう。 いずれの方法でも、ちゃんと車が走るものが作れますし、すでにこれを利用したバイオディーゼルスタンドもあるところにはあるそうです。 さて、両者の不協和音というのは、大豆系の業界からは、エコロジストが作るものには粗悪なものも混じっているので、バイオディーゼルのイメージ自体が下がるという意見が出されています。 一方のエコロジストからは、バイオディーゼルは資源の有効利用を図るためのものであり、わざわざそのために膨大な土地を使って作物を作るのは本末転倒だとの意見も出されています。さらに、大豆系は儲かっているのだから、粗悪な技術しか持たないものに技術供与すべきだ、との意見も出されています。 ニュース2: 次のニュースは、ロイターの運営する環境ニュースサイトからです。 EUは2012年以降の温室効果ガス削減目標を当面は設定しない方向 EUが、気候変動問題に関して、2012年以降の目標を当面設定しないということを表明したことで、環境NGOが反発をしているというニュースです。 EUは別に気候変動問題に後ろ向きになって、京都議定書で定められた最初の削減期間(2008年から2012年、第1約束期間)の削減が終われば、もう温暖化対策をやめたいと言っているのでしょうか? これはもちろんそうではなくて、EUの行動の意図としては、2012年以降(第2約束期間)には、アメリカ、中国などの大排出国を是非引き入れたいという考えがあります。そのためには、「どれだけ削減しなければならないけれども、入る?」という誘い方よりも、「削減量も一緒にきめません?」と誘った方が仲間になってくれやすいということです。 EUに反発している環境NGOはこの辺り、理解できないかというとそうではありません。環境NGOは、削減量は本来交渉事項ではなくて、科学的に必要な量が決まっていて、それを守らなければ経済や生態系に悪影響が出てしまうと考えています。 そう考えると、交渉事項は、誰がどうやって削減するかに絞られてきます。 また、不安としてはEUの政府を早めに縛っておかないと、EU全体が右傾化傾向にあるので、EUの削減行動自体が弱まってしまうという可能性もあります。この部分で、環境NGOがEUの意図にさらに懐疑的になっている部分も否定できません。 EUは、量も含めた全体について交渉した方が良い結果が得られると考えており、環境NGOは量の議論ではなく、具体的な手法について検討すべきだと考えているわけです。どちらの方が最終的に気候変動問題に貢献するかは、米国や中国が削減に同意した先にあります。簡単に言うと、第2約束期間だけではなく、第3約束期間やそれ以後のことを考えて、トータルな削減量が多い方が良いわけです。 環境原理主義 二つのニュースを見ると、エコロジストと環境NGOが原理原則を重視している様子が見えます。これに対して、大豆派やEUは現実社会において妥当と思われる戦略をとっていると言えそうです。もちろん、エコロジストや環境NGOも主張は原理原則を中心に主張しますが、合意という局面では現実的な妥協を行いますし、妥協を引き出すための原理原則という部分が全くないかというとそんなことはありません。 ただ、ニュースだけを見ていると、「環境系の人たちはいつも形式張ったことばかり言って「環境原理主義」みたいだから嫌だ。」という気分になってしまうかもしれません。 環境に興味があるけど、実際に行動するのはねえ、なんて思う人も多いでしょう。 けれども、実は相手の行動を批判するときにもっとも有効なのはこの原理原則論です。これ以外の理論だと、お互いの主張を振りかざすだけで、議論はかみ合いません。 最終的に何らかの合意が得られたとしても、両者をつぎはぎしただけのものになりがちです。 議論がぶつかったら、まず両者が合意できる段階まで戻ってみて、何が対立しているのか一緒に考える。 僕が読んだことのある交渉術の本に書かれていたことです。 環境問題で、お互いが合意できるのは、やはり「環境を守りたい」という原則です。 それなのにお互いの主張が食い違うのは、何が違うのか、きちんと話し合わなければなりません。 より良い結果、妥協というのはこういうプロセスをきちんと踏んで、対立点、主張が食い違い始める原因を探り、解決を模索することで得られるのだと思います。 「また原理原則か」ではなくて、原理原則を押さえたら、次に何が言えるか、それを考えてみてはどうでしょうか。 バイオディーゼルというのは、何らかの植物製油脂を生成して、ディーゼルエンジンの燃料として使えるようにしたもののことです。これを作る方法は非常に簡単で、原料となるオイルに薬液を混ぜて、しばらく一定温度の下で保温し、不純物(グリセリンが普通か)を除去すればできあがりです。