アメリカの温暖化防止政策、企業がそっぽを向く

Few Participating In Voluntary U.S. Strategy On Climate Change 米国の温暖化防止政策は、机上の空論に終わりそうだ。 周知のように、米国はブッシュ政権になって、京都議定書に参加しないことを宣言した。その代わりに、京都議定書と遜色ない効果のある方法として、GDP当たりの排出量を18%減らすことを中心とした温暖化対策政策を採っている。GDP当たりの排出量を減らすことは、国全体の排出量を減らすことと同義ではなく、それ以上にGDPが増加してしまえば絶対量すら増加する可能性がある。 実際、米国の二酸化炭素排出量は2002年現在で、1990年と比較して15.8%増加することが予想されている。この間、米国のGDPは年率3%程度ずつ増加しているから、GDP100万ドル当たり18%の削減というのは、事実上、削減になっていない。 さて、米国の政策であるが、いくつかの手法を組み合わせたものになっている。今回報道されたのは、このうちの、Climate Leadersという政策である。CO2排出量を10%削減する企業を募集したのであるが、膨大な数の国内企業のうち50しか参加企業がなく、数値目標を設定したのはわずか14企業であったという。 また、Climate VISONという政策は、産業グループを募集して独自の対策を展開してもらうというものであるが、参加企業は0であった。 考えてみれば当たり前だ。 「自主的に温室効果ガス排出削減に取り組むか、さもなければ京都議定書に参加する(又は、強制的に炭素税に移行する」 という仕組みでもない限り、取り組まないものが得をするシステムだ。 それを前提としたうえでどのように、企業や住民が参加していく仕組み、インセンティブ構造を作っていくのかというのが、政策の役割である。 これでは、米国はやっぱりやる気がなかったんだね、といわれても仕方がない。 米国にできることはいろいろあると思うが、やはり京都議定書の枠組みに戻ってくることがもっとも容易な方法だ。 そうすれば、京都メカニズムも利用できるし、国内企業にも諦めてもらうことができる。 単独(あるいは豪州を連れた)アプローチは、国内企業の説得が逆に困難であり、努力しても成果の出ないことにならざるを得ないだろう。 いつまでも単独行動が認められないことは良く分かっていると思う。イラク問題等と比べれば、米国首脳陣にとっては優先順位の低い政策のはずである。温暖化カードを切って、イラク問題へのより積極的な協力を欧州から取り付けるのはまだ手遅れではないはずだ。 もちろん、温暖化と平和を天秤にかけるのは嫌なことなのだが、我々にとっては、イラク問題に欧州陣営が積極的にかかわることはそんなに問題のあることではない。むしろ、米国とは違った復興のスキームが生まれてくる可能性もあり、歓迎すべきことだと思う。 ちなみに、米国の温暖化防止政策については、公式ホームページがある。