ごみを出さない社会に協力する自治体がまた一つ

先日、福岡県大木町がもったいない宣言(ゼロウェイスト宣言)をした。 徳島県上勝町に続いて2つめだ。 東京の大きめの市で宣言するかもしれないという話はあるが、まだまだ小さい自治体ばかりでだ。 ゼロ・ウェイスト宣言というのは、「自治体で焼却・埋め立てごみを今すぐゼロにする」と誤解されがちだが、実際には「地域に入ってくるごみになるものを減らす」ことを視野に入れているし、20−30年先に、焼却・埋め立てごみをゼロにすることを目指して戦略を立てるというバックキャスティングアプローチをとっている。 人は壮大な目標の前では足がすくんで動けなくなってしまうものだ。 「ごみをゼロにしよう」という目標を前にした自治体も同じだ。 しかし、ごみをゼロにするために、まずはこれをやろうと考えることができれば、そして、実際にゼロにするまでの道程が示されていれば、目先の目標は壮大なことでもなんでもない。 これが、将来の目標を描いて、そこから今やるべきことを決めていくというバックキャスティングアプローチの便利な点だ。 来年の就職活動で一流企業に就職しようと思う学生にとってこの一年はものすごく貴重だ。 (ある意味、今の時点でそんなことを目指そうという段階で手遅れ感が強いので、よけいに貴重だ) 一年間でやるべきことは、まず現状と目標をよくしり、両者の差をしっかりと認識することだ。 この作業をやったうえで、今何をするか、次になにをすればいいのか、計画を立てていく。 上勝町の場合には、2020年に焼却・埋め立てごみをゼロにするという目標を立てて、ごみの34分別を行っている。 現在はリサイクル率が80%近くと驚異的な水準に達している。 ここで課題になるのが、「これ以上、自治体のごみ収集・処理現場でやることがあるのか」という課題だ。 むしろ問題は、地域に入ってくるごみである。リサイクルに出した素材がちゃんと商品に生まれ変わっているかという追跡可能性(トレーサビリティ)である。 これらのことが一自治体の手に負えるのか? 自治体が「住民が出したごみを処理する役割」から、「住民がごみを出さないようにする役割」へと変化するのが第一段階だとしたら、次の段階は「ごみが出ない社会にする役割」だ。 ゼロウェイストを目指した実践を積み重ねている自治体は、 「ここまでがんばったが、手に負えない。だから、こういう制度が必要だ」 という政策提言を行なうことができる。 上勝町の面白いのはそのための機関として「ゼロウェイストアカデミー」というNPOを設立して、連携しながら政策提言をしていることだ。 自分の役割に閉じこもるのを「公務員体質」というのだとすれば、自分たちの役割を超えて、社会にとって必要なことをどんどんやっていこうとする体質をなんと呼べばいいのだろうか。 今のことばだと「社会的起業」という言葉が一番近いのだろうか。 「社会的責任自治体」という用語がふさわしいのかもしれない。 もちろん、社会的責任自治体は、ごみ関係だけにとどまらない。 全国の中小規模の自治体に社会的責任自治体が増えてくれば、世の中も変わりはじめる気がする。 そこで果たす僕や、みんなの役割って何だろうか? ぼーっと眺めていて、見殺しにすることだけはしたくない。