排出権に関する間違った認識

温室効果ガスの排出権市場が盛り上がっている。昨年には年間で5000億円近い額の取引があったという。 もちろん、この市場で一儲けしようとする人や企業も多いのだろう。 温暖化という深刻な問題で儲けようなんて、なんか嫌な話だけれども、制度設計で(認証された)民間企業の参加を認めてしまった以上、仕方がないだろう。 最近気になっているのは、「中国から排出権を取得」とか、「途上国の排出権市場」という言葉だ。 温室効果ガスにおける排出権取引(本当は「排出権」という言葉も違う)は、あくまでも京都議定書で削減目標を持っている国の間だけで行なえるものだ。 これらの国で発生した削減クレジットを移転するための制度だ。 それなのに、削減目標を持たない中国や京都議定書に参加していないオーストラリアとの取引があたかも自由に行なえるかとでも言えそうな報道や宣伝が多い。 最近の報道では、「【中国】北京に「排出権取引所」 中国と国連、年内設立目指す 英紙報道」というものがある。 なんやこれ?と思って元ネタに当たってみたら、訳がぼろぼろな有様。 計画に参加しているUNDP(国連開発計画)の担当者の発言でも、この取引所が温室効果ガス削減に関する国際取引所として意味を持つのは2012年以降、つまり京都議定書以降であると書かれている。 これを訳さずに、「中国が2012年までに、世界全体の二酸化炭素の排出枠の41%を占めると予測しており、欧米と世界3極をなす可能性のある取引所に期待している」という部分だけを訳すのは意図的にしろ、少々納得がいかない。 ちなみに、その下に「プロフィール」として、排出権取引の説明があるが、これも間違い。 EICネットの用語解説ぐらい参照した方がよい。 ほんとうは、批判めいたものは書かないようにしようと、最近心がけているのですが、さすがに最近の温暖化をめぐる不正確な報道には一言言いたくなってしまいました。 ゴアの不都合な真実もいいけど、「不正確な報道」にもみんな関心を持ってもらえればと思う。