努力することすら許されない社会が近づいているのか

最近、テレビを見るといえばNHKばかりだ。今日のNHKスペシャルは途中で見るのをやめたくなるような内容だ。家でのんびりお酒飲みながら見る番組じゃなかった。働いても生活が維持できないような人が増えてきているということを指摘した今日の番組、次期首相候補や小泉首相の考えがききたい。 そして、一経済学者として、自分はこれでいいのか、猛省を迫られる番組だった。 景気が回復したと政府や日銀はいうけれど、数字上の景気回復の裏で進行している事態をどう思っているのだろうか。 おそらく、大企業の業績が回復すればそれが中小に波及し、雇用にも好影響をもたらす、ひいては失業者も減り、社会全体がよくなっていく、そんな考えだろう。 こういう上がよくなれば下までその効果が波及するという考えを「トリクルダウン経済学」という。スティグリッツはその著書「人間が幸福になる経済とは何か 」で、こういう考えを「古くさい理論であり信用できないという見方」が一般的であると指摘している(p.348)。 おそらくトリクルダウン経済学について、「まあ、そういうこともあるだろう」と賛同する人もいると思う。けれども、上の人が金持ちになった効果が下にまで波及するのはいったいいつなんだろう。 それが問題だ。 日本はこれだけ豊かになった。 でも今、格差社会、ワーキングプア、ニートといった問題があらわになってきている。 ワーキングプアは、今に始まった話ではないはずだ。今問題なのは、「いつかは豊かになれるはず」と思って働き続ける人に、そんな未来はないよと、次々に宣告が下しているのが今という時期だ。 僕自身も、学者として何ができるのか、一人の人間として何ができるのか、ほんとうに考えなければならない時期に来ている。 もちろん、それ以前に、自分も安泰ではない社会が確実にきていることも忘れてはならない。 国民基礎所得という概念がある。 国民、あるいは労働者一人当たりにつき、いくらかのお金を一律で支給するという制度だ。 今までは「荒唐無稽なあほらしい考え方」と笑われてきた気がするが、少しまじめに考えた方がよい気がしている。 単純に労働者バージョンで説明すると、人を雇うと給料の一部(たとえば6万円)が国が支払ってくれるという制度だ。 企業にとっては、賃金支払いが(社会保険を無視すると)月あたり6万円安くなるから、人を雇いやすくなる。 国にとっては、ハローワークや生活保護、税の支払い免除などによるコストを削減できる。 社会全体としては、職場である程度の訓練を受けた人のストックを増やすことができる。 つまり、失業のコストを考えれば、この方が安いのではないか?と思えるのだ。 ・・・「思う」のではなく、ちゃんと分析するのが僕の仕事。研究が進んだらまた報告します。 NHKスペシャル「ワーキング・プア〜働いても豊かになれない〜