日々を過ごしていると、「これからどうなるんやろう」という不安感がわいてくることってあるとおもう。 その正体を解明しようと取り組んだのが今回紹介する2冊(といっても両方とも上下の大作なので4冊)。 今世の中では、産業革命以来の変化が起きていると主張する。レクサスとオリーブの木の著者、トマス・フリードマンと第三の波の著者、アルビン・トフラーと(その妻、ハイジ・トフラー)だ。 今回は、表紙のきれいさにひかれて、フラット化する世界を先に読んだ。そのあとでトフラーの富の未来を読んでみた。両者とも、基礎となる資料や情報は驚くほど似通っているので、後に読む方はわりとすぐに読めるだろう。 フリードマンのいうフラット化と収束によってもたらされる世界がイメージをつかみやすいのに対して、トフラーの描く未来の世界は少しわかりにくい。 フリードマンはフラット化する世界の中で「アメリカはどうなるのか」という視点で書いている。一方のトフラーは世界がどうなるのかを描いている。この視座の置き方の違いから、細かい主張は異なるが、だいたいのところは同じような感じの本という印象だ。 正直いうと、読んでいておそろしくなった。 特にフラット化の方は、世界やサービスがフラット化するなかで、フラット化できない自分だけのサービスを供給すればよいということが書かれている。しかし、自分だけのものを持っている人も、すぐ後ろにはより低コストで同等のサービスを供給しうる多くの個人が控えているため、不断の努力が必要だ。 そして、最先端でフラット化と戦う人々以外のことは、現在、フラット化と無縁の世界にいる途上国で一日一ドル以下の生活をしている人々のことしか書かれていない。 サービスや製造業がオフショアリングし、職がなくなってしまう先進国の人々のことはほとんど触れられていない。 こういった人々に目を向けている部分があるのは、トフラーの方。 トフラーは、生活の中で行なう、賃金労働以外に価値を生む活動(家事労働など)を生産消費と第三の波で名付けたが、最近は、これ以外の生産消費が増えてきているという。 一見、便利なように見えて、「よう考えたら、なんで俺が窓口業務せなあかんねん」とPCの前で叫びたくなるのが、オンラインバンキング。トラブルなしにすんなりいったら、そうでもないけど、本来はやっぱり窓口係がやってくれた方が楽だし、いらない時間も使わなくていい。 他にもホテルをオンラインで予約したり、カスタマーセンターで人間につながるまで延々と電話のプッシュボタンを押すはめになったり、今まで人間がやってくれていたことをいつの間にか「お客様」である自分がやらなくてはならなくなっている。 それでコストダウンになっているかといえば、料金はほとんど下がっていない。 つまりは、銀行は客を働かせることでもうける手段を見つけたというわけだ。 まあ、そんな恨み節はおいておいて、こういう最近増えたセルフサービスを新しい生産消費として、トフラーはこれからもこの携帯のものがどんどん増えていくだろうという。 つまり、一般の消費者は、労働によって所得を得て、余暇を過ごそうと思っても、新しい生産消費が増えているので、なぜか慌ただしい(序章)ことになるのである。 そして、職がなくなった人々をどうするのかといえば、再教育することによって新しい産業へ送り込むことが求められる。 ここでも、やはり生き残るためには努力が必要になる。 つまりは、のんびり今までと同じようなルーチンワークをこなしていれば、徐々に所得が上がって定年後はさらにのんびりという暮らしなんてどこにもないということだ。 それはそうだろう。 今までは単純労働以外の付加価値が高い仕事のみが海外に出ていたのが、これからはよほどのものではない限り、海外と国内の区別はなくなってしまう。 その中で生き残るのであるから、楽に暮らせる人はどこにもいないはずだ。 なんだか大変な世の中になってきそうだけれども、救いはある。 どちらの本も最後は、「未来はまだ決まったわけではない」と言っている。 そして、こういう世の中で自分はどうやって生きるかはこれから自分たちで作っていく必要がある。 現に、フリードマンも持続可能性を重視する「グリーン」な政治の必要性を主張し、自らもそれに向かう姿勢を示している。 現在のような変化は、渦中にいるとそのインパクトはなかなかわからないけれども、なんとかそれをあらわそうと努力した両者の著作、自分の今の立ち位置を考える基礎とするためにも、一読しておく必要がありそうだ。 この二つの書籍、いろいろと参考になる点が多いので、もう少し話を続けてみたい。 (今また読み直しているところ)
posted with amazlet on 06.07.19
トーマス・フリードマン 伏見 威蕃
日本経済新聞社 (2006/05/25)
posted with amazlet on 06.07.19
A. トフラー H. トフラー 山岡 洋一
講談社 (2006/06/08)