横浜市で集積所に出された家庭ごみを市の所有物にするという条例が制定された。 杉並区などでは、すでに資源ごみについては所有権を設定していたが、家庭ごみについてははじめてらしい。 ちなみに、僕自身は資源ごみの持ち去りについては、占有離脱物横領罪を適用すべきな気がするが、解釈をごちゃごちゃいじるよりは、法的に明確にするということの方がベターなので、こういった動きは歓迎したい。 ---引用--- 横浜市の条例で対象とするのは原則、決められた曜日の午前8時までに、集積所に出されたゴミ。収集日前夜に出されたゴミも対象とし、被害が度重なる場合は市が見回るなどの対策を取り、告発も検討する。 (Yahoo!ニュース - 社会 - 読売新聞社) ---引用終わり--- 家庭ごみと資源ごみでは、それに窃盗罪を適用できるかどうかは実はかなり開きのある問題だ。 まず、資源ごみは、回収して売るところに売れば、キロ数円~数十円になる。自治体は、その価値を認識して「資源ごみ」としてわざわざ回収している。 そう考えると、もともと資源ごみの持ち去りは、きわめて「窃盗」あるいは「占有離脱物横領罪」を構成する可能性が高く、グレーゾーンであったと言える。 だから、資源物の持去りを窃盗罪としても、そんなに問題はないだろう。 それに対して、問題は家庭ごみだ。 家庭ごみは、回収しても売ることは出来ないし、回収して処理するには逆にキロ当たり数円のコストもかかる。 すなわち、窃盗しても盗まれた「財」の価値がマイナスの価値しかないということになる。 これを「窃盗」で取り締まるということは可能なのだろうか?有罪にしたところで、微罪で終わる恐れもある。あるいは、「保護法益が極めて低い」として、不起訴になることも考えられる。 すなわち、家庭ごみの持去りは本来窃盗罪とはまったく関係が無い問題ではないだろうか。資源ごみについて窃盗罪を適用する自治体が増えているから、家庭ごみもというのは安易に過ぎないか。 (新聞記事だけでコメントする俺の方が安易か?論文じゃないから許して。そのうち、きちんと調べるから) 家庭ごみについては、むしろ、「ごみ持去り罪」という社会的法益を守るための法律を制定して対応すべきではないだろうか。 さて、ここで問題がいくつか発生する。 まずは、ごみを持ち去ることが窃盗罪なら、粗大ごみや資源物の集積所においてある「まだ使えそうなもの」を持去ることもだめなのだろうか? 捨てた側にとっては、「いらないけど、知らないやつに使われるのは嫌だ」という人もいるだろうし、「使えるんならどうぞ使って」という人もいるだろう。自治体はたぶん、「この法律で意図しているのは、空き缶やびんなどの資源物だ。使える家具や電気製品は持っていっても構わないのでは?」という見解を示しそうな気がする。 このとき、捨てた人は、持去った人を告訴できるのだろうか?もしそうなったとしたら、怖くてごみ置き場には近寄れない。。。 もう一つの問題は、ごみを捨ててから、「あっ!あれ、間違って捨ててしもた!取りに行こう」といって、ごみ袋を開けた瞬間「御用!」という結果を招きはしないか、ということ。 自分のものって後で証明は出来るだろうけど、朝のめちゃくちゃ忙しい時間にそんなことでクレーム付けられたらたまらない。 ・・・普段から近所の人と仲良くして顔見知りになっておくことが対策かな。だとしたら、ごみ持去り窃盗罪法は、近所の絆を強めることに貢献するのかもしれない。 ごみの価値は?って問題をもうちょっと考えてみる。 住民の不安として、「ストーカーがゴミ袋を開けて下着などを持っていかないか心配」があげられてる。 なるほど。 確かに有価物になるかも。 これに対して有価物にならないのは、 「思い出の写真」 とかだ。 売っても客観的な価値は無い。 ただ、こっちはプライバシー権で保護されるのかな? 「外から見えないごみ袋に入れて捨てているから、プライバシーを放棄したわけではない。」 あるいは、 「すぐに破れる可能性のあるビニール製のごみ袋に入れて、公の場(ごみ集積所)に放置したのであるから、自ら公開したものと考えることが出来る。すなわち、この場合にはプライバシー権は放棄されたとみなせる」 となるのかな? と、結構面白い話がいろいろとありますね。 大学生は、「判例マスター」とかが図書館で使えるのでいろいろ検索して裁判例を探してみるのも面白いかも知れません。