ひとが住み、はたらく場所〜タイ・ミラー財団チェンライ事務所

年度末で、海外に行く予算が残っていたことと、ようやく時間ができたこととで、きゅうきょ、昨年9月に続いてタイを再訪することになった。 今度の目的地は、前回より少しきたのチェンライ。 大阪のワン・ワールドフェスティバルで知り合った立命館大学の学生フェアトレード団体believeが教えてくれた「ミラー財団」という団体の活動する場所を主に調査することにした。 調査自体は、ミラー財団の活動そのものと、彼らの実施する山岳民族の生活を体験し、ボランティア活動をするツアーへの参加、チェンライ周辺のフェアトレード団体の調査を予定していた。 熊本を28日の夜出発し、飛行機を乗り継いで、チェンライに到着したのが29日の10時前。 空港に出迎えてくれた伊能さくら氏と、今日から1ヶ月ボランティアをするという学生と一緒に、ミラー財団の事務所へ向かう。 freespace車に乗ること30分程度で到着したのは、「ムラ」といいたくなるような場所だった。 車を止めた広場を囲むようにいくつかの建物が建ち、広場の端には川が流れ、その向こうの斜面に沿って家がさらに続いている。 地面は舗装されていなくて、人が歩く場所以外は土のままだ。 となりの敷地には馬がつながれているし、敷地内には猫や犬がたくさんいて、牛まで昼寝している。 そして、外に広めの屋根がある建物では、その屋根の下で、数人の女性が何かの作業をしている。 (あとでこれが今回のお目当てである土の笛の製作現場であることが分かった) ここでは30人前後のスタッフと、数人(からときによっては20人ぐらいとか、もっと)のボランティアが働いたり生活したりしている。 食事も定住しているスタッフは自分の家で食べるばあいも多いようだが、ボランティアは食堂で食べることができる。 freespaceボランティアは長期滞在のボランティアと短期滞在のボランティア用の建物が複数あり、グループごとに分かれて暮らすことができるし、スタッフは自分の家を持っている人も多いようだ。 こういう共同生活的な要素を持ったコミュニティにしては珍しく、各人、特にスタッフのプライバシーをちゃんと保てるようなコミュニティになっている。 「共同生活を営むコミュニティ」というと、プライバシーがない気がして、僕は息苦しさを感じてしまうのだけれど、ここではそういう心配もない。 そして、スタッフは独立採算制のプロジェクトを運営し、収入を得て暮らしている。 仕事も当然それに応じたものであるから、各人の裁量の幅が大きいように思える。 田舎暮らしをする人には二種類あるという。 地域との関わりを積極的に求める人とできるだけ関わりを持ちたくないという人だ。 ミラー財団のようなコミュニティが存在すると、前者のような人はかなり自然に溶け込むことができるだろう。 後者の人も、自分の建物を持つ立場になることができれば、コミュニティで暮らすことが可能だ。 後者のタイプは、コミュニティに依存する度合いが少ない一方で、独自にものごとを考える人であることも多いので、うまく活躍すれば、コミュニティに刺激を与え、活性化する役割も担ってくれそうだ。 そういう意味で、いろんな人が入って気やすい、コミュニティづくりのヒントがこのミラー財団のチェンライ事務所にはあるように思う。 ミラー財団のスタッフの働く場所、生活する場所を見て、体験することができたことは、今回の調査での大きな成果だった。 フェアトレードに関して収穫がなくても(けっこうたくさんあったけど)、これだけでも一つの成果といえる気がする。