読書メモ:『追跡!私の「ごみ」』

エリザベス・ロイト(訳:酒井泰介)『追跡!私の「ごみ」』NHK出版、2009年 (Elizabeth Royte “Garbage Land: On the Secret Trail of Trash”) 家庭から出るごみの行方をていねいに追いかけたドキュメンタリー。 下水まで含まれているのが、日本ではあまり例がない。そもそも、日本で下水の話を研究者が調査・研究しているのか少々疑問に思う。 本書は、ごみ処理の世界の暗部にも少しだけふれ、リサイクルの非経済性も紹介しながら、「リサイクルなんてやめてしまえ!」という結論にはなっていない。 著者は、この調査と平行して、自宅のごみを細分別して重量を量るという試みや、コンポストを作ったりしている。 こういった一連の活動の中で、以前なら見向きもしなかった海岸清掃にも参加した。 「環境的市民性」という観点を使って、一見むだかもしれない日々の取り組みの意義を説明する。 同時に、五年や一〇年ではなく、もっと長期の視点を持つべきだと指摘する。 現状を批判することが「知っている」ことの証と勘違いしてしまって、辛口でさめたコメントがもてはやされるが、そういう不十分な現実を知って、なお前に進もうとする意思こそがだいじだと、本書を読んでいて、気づかされる。 なにより、ごみ処理の問題は、はじまったばかりだ。 様々な技術や政策が実験され、何が生き残るか試さなければ、これからの方向性を決めることなんてできない。 「完璧なものが出来上がってから、実際に導入すればいい」というと賢そうだが、まともな工学者なら、実験室での実験が現場でいかに役に立たないか、現場での経験がどれだけ貴重な「実験」か、よく分かっていると思う。 以下、おもしろかった記述の一部を紹介しておく。 p.24 アリゾナ大学のごみプロジェクトが提唱したパーキンソンのごみの法則 ごみは、その収容容器や場所がいっぱいになるまで増えるものだ p.55 サウスカロライナ州で最も貧しいリー郡では、年間予算の五分の一を、ごみ処理会社アライド・ウェイスト社から受け取っている。ミシガン州のサンプター郡区は、カナダのトロントのごみを引き受けて、歳入の半分を得ている。 p.104 焼却の安全性について おそらく、そういった数字データはもはや問題ではなさそうだ。この十年間、地域の反対や連邦および州の規制強化の結果、ごみ焼却発電施設の維持および新設は、非常に高くつくようになっている。一日にわずか千トンのごみを処理する施設を建設するのにさえ一億二千万ドルもの費用がかかるのである。実際、アメリカ国内では九六年以来、ごみ焼却発電所は新設されていない。