まちづくりのために、建物建て替え・新築税の構想

先日、京都に住む友人の家に泊まった。 小さな町家に引っ越したというから、どんなところなのかすごく気になって、花見の帰りに泊めてもらうことになった。 友人の家は玄関を入った正面にまっすぐ奥まで細長い空間が広がっている。左手は壁、というか隣家で、右手には6畳間が二間、縦につながって、その奥はバス・トイレだ。 細長い空間は、半分が玄関スペースで、その先はドアを隔てて、キッチン、さらに坪庭だ。 なるほどこれが町家か。 と、実は京都の町家の中を見たのは初めてだったので、勝手な想像とつきあわせてみた。 もっと暗いイメージというか、「古民家」というイメージがあったのだが、内装はすっかり作り替えられていて、古いのは細長い敷地の使い方と外見だけで、中はちょっと間取りの変わった普通の住宅だ。 ただし、この家は家主の好みか、木がふんだんに使われている。 町家っていいなと思うが、町家は今は貴重だ。 今の建築基準法では、どうやら町家は立て替えができないらしい。 消防法か耐震かは分からないが、とにかく、町並み保全とは関係ない部分で規制がかかっているそうだ。 この不況で、住宅ローン減税がまた拡大されるそうで、建物の新築を促進する仕組みができてきている。 しかし、その背後にあるのは、町並みを作り上げている古い家達である。 古い家は、相続税の関係もあり、潰してマンション用地にして売ったほうがよいばあいがあるそうだ。 しかも、立て替えは(町家のばあいは)できない。 こんなことを続けていたら、日本から古くて風情のある建物はなくなってしまう。 もちろん、猥雑でアジア的な雰囲気を持った鶴橋のようなまちもなくなるだろう。 その結果として生まれるのは、不揃いで醜い町なみだ。 確かに一部のすでに価値が認められた町なみは保全されるかも知れないが、なにげない街角に風情というものはあるものだ。 町なみを見に来る観光客はあちこちで増えているが、今の日本の制度はその逆を行っている。 こんなことで、日本のまちづくり、景観づくりは、先行きが不安だ。 私は今は、立て替えを促進する税制を改めて、立て替え・新築を抑制する方向、すなわちリフォームを促進する方向での法整備を望みたい。 あまりに老朽化した場合には、外観を残しながら建て替えるばあいにはリフォームと同等と見なしてもいい。 いま、くらしをいとなむ研究書というのを作ろうとがんばっているのだが、その最初の研究として、このテーマを取りあげたい。