1日2ドル以下で暮らす「貧困層(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド:BOP)」は援助の対象ではなくて、商品を購入してくれる顧客だという主張。 「まったく多国籍企業はどこまで人々を食い物にすればええんや。ぼろくそに批判したる!」という意気込みで購入した。 読んだ結果、「なるほど納得」。 本書はプラハラード教授とその学生たちが調査した結果に基づいていて、主張もその背景もしっかりしている。妙な論理の飛躍もなく、ぜひ一読をお勧めする一冊。 特に、BOP層の心理として、企業がBOPに「消費者として注目される自尊心と選択の機会」を与えるという主張(p.51)は鋭い。 口では自立しろと言いながら、「あんたらはほんまは稼がれへんねんから、僕らが助けたるな」といいつつ援助をしているのでは、いつまでたっても途上国の自立は見えないのかも知れない。 そういえば、NGOのスタッフから「援助疲れ」という言葉を聞くことがある。 それではこれで世界の貧困が解消されるのかといえば、手放しでは喜べない気もする。 BOPが貧困から脱する鍵を握るのは大企業だというようなことが本書の主要な主張だが、いくら大企業と地元企業、地元住民、NGOのパートナーシップが重要だと言われても、世界の富裕層から貧困層までがグローバリゼーションに飲み込まれていくのはなんだか恐ろしい。 それと、彼らが主要なマーケットと見なしているのは中国、インド、南米である。 これらの市場はすでにテイクオフの経路に乗っているという見方も出来る。 問題なのは、それよりも下のレベルにある国々ではないのか?特に戦争や内戦に苦しむ人々だ。 本書はこれらの国や地域でいかにして平和を構築するのかという重要な問いには答えているだろうか? もし答えていなければ、すでにテイクオフしかけた市場を見て、「参入する大きなチャンス」と言っているだけで、これらの市場をここまで安定させた努力を軽視していることにならないだろうか。 ちょっと批判的にコメントしたけれども、冒頭に書いたように非常に興味深い本だ。 賛成できる指摘も多くあったので、少していねいに読み返す予定だ。
ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略
posted with amazlet on 05.11.07
C.K.プラハラード スカイライト コンサルティング
英治出版 (2005/09/01)
売り上げランキング: 314
おすすめ度の平均:
久しぶりに骨太な本
常識をくつがえす
MBA必読